
※数年前の話です(身バレ防止のため、時期や状況は一部ぼかしています)
今でも、指にうっすら跡が残っている。見るたびに、あの頃のしんどさが戻ってくる。
体力も精神も、もう限界だった
数年前、泊まりがけの出張に行っていた。期間は数週間。体を使う仕事で、休みは週1日。
もともと体力があるタイプじゃない。毎日くたくたで、翌日のことを考えるだけで気が重かった。休みの日もホテルにいるだけで、正直あまり休まらない。
しかもこの頃、すでにメンタル面でも調子を崩し始めていた。体と心の両方がじわじわ削られていく感覚。でも出張中だから、途中で「無理です」とは言えない空気があった。
手袋を外した数秒のミス
出張も終わりが見え始めた頃、作業中に手をケガした。
ちょっとした確認で手袋を外してしまったのが原因だった。指に切り傷ができて、血が出てきた。
最初は「このくらいなら大丈夫だろ」と思った。でも、少し時間が経つと、だんだん痛みが増してくる。
「労災は、使わないほうがいいですよね」
上司に報告した。
そしたら上司は、お客さん側の偉い人に電話してこう言った。
「労災は、使わないほうがいいですよね~」
使わせてください、じゃなくて、使わないほうがいいですよね、かよ。
車で病院に向かう途中、正直、なにも考えられなかった。指はズキズキ脈打ってるし、「迷惑かけた」という気持ちと、「いやでもこれおかしくないか」という気持ちが交互に来る。
途中で「やっぱり行かなくても大丈夫かも」と僕が言った。作業を離れるのが申し訳なかったからだ。
今思えば、その言葉を”待ってました”みたいに拾われた気がする。
「あなたが病院に行きたいって言うから、行くんだからね」
最初に「病院行ったほうがいいかも」と言ったのは僕だ。でも、その後に「やっぱり行かなくても」と撤回した。それなのに、都合のいい方だけ拾われた。僕にはそう見えた。
疲れすぎて、涙があふれてきた。なんで自分がこんな目に遭わないといけないんだと思った。車の中で、大人が子供みたいに泣いていた。上司は「仕方ないな」みたいな顔をしていた。
(今思い出しても、絵面がひどい)
そして病院につく前に、こう言われた。
「労災は使わないでください。お願いします。」
結局、1万円弱の治療費を自腹で払った。自腹かあ、嫌だなあ。痛いし金は減るし、なんなんだこれ。会計を待ちながら、ぼんやりそんなことを考えていた。
ケガして、ちょっと休めてよかった
ひどい話だけど、正直に書く。
あの時、体力的に限界が近づいていたから、ケガして病院に行く時間が、つかの間の休憩みたいでホッとした。
ケガしてよかったなんて、普通は思わない。でもあの頃の僕は、それくらい追い詰められていた。
合わない場所で粘ると、体が先に折れる。当時の僕は、折れる手前でたまたま指が切れただけだった。
今も、逃げ続けている
あの頃の自分に「逃げていいよ」と言ってやりたい。でも当時は、そんな選択肢があるとすら思えなかった。
正直に言うと、今も逃げ続けている。体調は安定しないし、短時間勤務で、できることも限られている。あの頃と形は違うけど、しんどさはまだ続いている。
ただ、あの出張の時みたいに「無理です」が言えなかった自分よりは、少しだけマシになったと思いたい。
今でも指の傷を見ると思い出す。あの時飛んでいった自腹の1万円、今からでも請求できないかな、、、
【おまけ】労災ってなに?
仕事中や通勤中にケガをしたり病気になった場合、治療費が補償される制度。会社には届け出る義務があって、「使うな」と圧をかけるのは、いわゆる「労災かくし」と呼ばれるトラブルにつながることもある。
当時の僕は、そんなことを知る余裕もなかった。

