数年前の話
だいぶ前のことだ。入社2年目、部署異動する前の話だから、もう数年経っている。
当時、ある現場への出張があった。メインで引き継ぎをしている30代の先輩と、60代の上司、そして自分の3人。期間はそこそこ長かった。
学生時代に運動部に入っていたわけでもなく、体力には自信がなかった。正直、初日からしんどかった。
体がついていかなかった
あるとき、作業中に体がしびれてきたことがあった。「ちょっとそこで休んでおけ」と言われて、しばらく座り込んでいた。先輩も上司も、特に何か言うわけでもなく、そばで淡々と作業を続けていた。
あらかじめ持ち込んでいたポカリが、ぬるくなっていた。季節は夏前で、気温がそこそこ高かった日だったと思う。軽い熱中症だったのかもしれないし、単純に疲労が溜まっていたのかもしれない。今となってはよく分からない。
別の日には、昼ご飯の後に車で仮眠を取ったら、起きた時に頭痛がした。これも暑さのせいだったのかもしれない。
あと、指に切り傷を負ったこともあった。大怪我というほどではなかったけど、慣れない作業に体がついていっていなかったんだと思う。
ホテルに帰ってからも仕事
現場から帰る時間は、平均して20時くらいだったと思う。いつも帰る頃には外は真っ暗だった。
ホテルに戻ったらまず晩御飯を食べて、そこから写真の整理をする。現場を覚えるために任された作業で、撮った写真を資料と照らし合わせながら分類していく。「これどこだっけ」というのが結構あって、資料を読み返しながらやるから、1時間から2時間はかかる。
正直、サボりたいとかそういう感情すらなかった。「やらなきゃ」で毎日やっていた。当時はまだ、頑張ろうという気持ちが強かったんだと思う。
ホテルに帰ってからも仕事。これが地味にしんどかった。
23時の牛丼
一番記憶に残っているのは、ある日のことだ。
22時まで作業が続いた。そこまでは、まあ、ギリギリ耐えられた。問題はそこからだった。
事務所に戻ってから、先輩が上司に対してあれこれ話し始めた。アドバイスというか、説教というか。自分はその場にいるだけで、口を挟む余地もなく、ただ座っていた。
それが終わったのが23時過ぎ。
当然、まともに開いている飲食店なんてない。仕方なく、24時間営業の牛丼屋に入った。
疲れ切っていて、何も考えられなかった。味も覚えていない。ただ、牛丼を口に運ぶ動作だけを繰り返していた。頭の中は「無」だった。たぶん、アドレナリンが出ていたんだと思う。深夜ハイみたいな状態で、なんとか体が動いていた。
早く帰りたい。それだけだった。
ホテルに戻ったら、受付の人に「毎日遅くまでご苦労様です」と言われた。ああ、覚えられているんだなと思った。そりゃそうだ。毎日こんな時間に帰ってくるんだから。
部屋に着いてからも、写真整理。寝たのは午前2時半。翌朝の出発は7時。6時には起きないと間に合わない。
睡眠3時間半。
家族にはLINEで「遅くなってしんどい」と送った気がする。それくらいしか、吐き出す場所がなかった。

体力がある人を尊敬する
こういう仕事を、先輩も上司も普通にこなしていた。体力のある人たちは本当にすごいと思う。素直に尊敬する。
自分には、きつすぎた。
まあ、今の部署に異動してからは、こういう出張はなくなった。そもそも今は精神疾患を抱えて短時間勤務をしているわけで、仮にあの頃と同じような仕事が来たら、たちまち体調を崩すだろう。
当時は「しんどいけど、やるしかない」と思って食らいついていた。でも振り返ると、あの頃から既に無理をしていたのかもしれない。体力がなかったのか、メンタルが弱かったのか、あるいはその両方か。
よく分からない。ただ、今の自分の原点は、案外あの出張にあるのかもしれないと、ふと思うことがある。

