第10話 今夜が、いつかだ 転生特典は米軍払い下げ?〜弾丸1発1ポイント。ハンヴィー1台から始める異世界軍事立国、気づけばイージス艦まで揃ってました〜

《転生9日目・未明》

 先頭のオーガは、胸と両腕から血を流しながら、まだ走っていた。

 距離、四十メートル。残弾、百九十。

 視界を埋めるレベル3の一覧を閉じ、俺は角笛を二度鳴らした。

 低い音が村を横切る。東壁の組が西へ走り、担架班だけが逆向きに負傷者を拾った。水桶の列は窪みで止まり、石蔵にいた子供と老人は、大人に引かれて西門へ向かう。

 壁裏では、農夫二人が予備三脚を担ぎ、荷車の内側へ走った。一昨日、二度目の演習で通った順番だ。

 俺はM240の引き金を絞った。連打が迫る巨体の膝を叩き、オーガは前へつんのめる。後続がその背へ乗り上げ、緑と猪頭の列が一度詰まった。

 止めるために撃つんじゃない。

 二分を買うために撃つ。

 ヤンが弾帯の残りを送り、俺は短い連射を重ねた。最初の百発が消える。新しい帯へ替える数秒は、ガルムと壁上の槍が埋めた。

 二体目のオーガが膝を折り、倒れた二体が新しい段差になる。その隙に、最後の担架が広場の荷車を抜け、残りの弾帯が給弾口へ吸い込まれていく。

 最後の一発。

 機関銃が止まると、魔物の足音が夜を取り戻した。

 俺は石壁の陰へ沈み、手榴弾を一個投げる。破片が壁を叩き終えてから立ち、次の遮蔽へ移った。

 二個目。三個目。

 土煙の向こうで、昨夜まで無傷だった東壁の石積みが、オーガの肩に押されて崩れた。

 車を置いた東作業口ではない。南へ十数歩ずれた場所に、今夜初めての破れ口が開く。

 四個目。五個目。

 ガルムが南の水口から戻り、破れ口へ大剣を向けた。俺たちが下がるまでの最後尾を、引き受ける構えだ。

 六個目を投げると、爆煙が東壁を呑んだ。

 先頭の影が崩れた石へ折り重なり、後続がその背へ乗り上げる。完全に止めたわけじゃない。運ぶ四十秒を、石と死体に肩代わりさせる。

「今だ」

 給弾蓋を開き、送弾部が空なのを確かめる。|槓桿《こうかん》を引いてボルトを後ろへ止め、安全装置を掛けた。ヤンは冷ましてあった予備銃身の袋を肩へ掛け、銃架の固定ピンを抜く。

 十二キロ余りの鉄を、二人の間へ吊るす。銃身は赤くない。それでも把手以外へ触れる気にはなれなかった。

 ハンヴィーのエンジンを切る。車体は封鎖した東作業口と石壁、土嚢の窪みに残した。

 破れ口から入る群れは、人の匂いと開いた退路を追って西へ流れる。動かない鉄の塊より、生きた人間を選ぶはずだ。

【車両燃料残量:19%】
【満タン補給を予約しました/戦闘解除まで保留】

 六個目の爆煙を背負い、俺とヤンはM240を運んで五十歩を走った。ガルムがその後ろを下がる。

 荷車の内側には、先に運ばれた三脚が待っている。受けへ銃を落とし、固定具を噛ませた。銃だけは、四十数秒で撃てる位置へ戻った。だが、火線を戻す弾がない。

 一人でも退路で詰まっていれば、石と死体が作った四十秒は消えていた。順番を守って退いた村人たちが、最後の余白を残してくれた。

【現在残高:1,520AP】
【7.62mm弾:0/手榴弾:0】

 ◇

 広場の入口では、石と土嚢を積んだ壊れ荷車二台が斜めに噛み合っている。両側は、麦を収めた石蔵の壁と焼失跡。中央に残した通路は、オーガ一体が肩を擦る幅しかない。

 涸れ谷で使った漏斗を、村の中へ作り直した形だ。

 視界の棚から、大型対象用の圧力信管を備えた対戦車地雷一個と、三百発の弾を選ぶ。

【対戦車地雷・大型対象用×1:-150AP】
【7.62mm弾×300発:-900AP】
【現在残高:470AP】

 俺の足元へ、緑色の円盤を収めた箱と、百発箱三つが現れた。箱が届いても、勝手に埋まりも、銃へ入りもしない。

 東壁の破れ口では、六個目の爆煙の中で、崩れた石と死体へ後続がつかえていた。長い猶予ではない。通路の東二十メートルを往復する間だけだ。

「箱は銃へ。円盤は俺がやる」

 |髭《ひげ》の農夫たちが弾薬を持ち上げ、ヤンが最初の帯を載せる。その間に、俺は通路の東へ出た。

 ガルムと槍の組は荷車線に残る。東壁の瓦礫が先頭を遅らせているうちに信管の表示を確かめ、二十メートル先の柔らかい土へ円盤を置いた。薄く泥を被せる。

 ゴブリンの重さでは動かない。だが、オーガが踏めば動く。

 最後に作動状態へ切り替え、印を踏まないよう来た道を戻る。俺も荷車の陰へ滑り込み、近接組を伏せさせた。

 緑の影が、円盤の上を駆け抜ける。一体、二体、十体。何も起きない。後ろから来たオーガが、倒れたゴブリンごと踏み込んだ。

 地面が、内側から持ち上がった。

 爆圧が荷車の板を震わせ、土の雨が石壁を叩く。全員が伏せたまま、降ってくる音が消えるのを待った。

 通路の東には穴が空き、その縁へオーガの巨体が横倒しになっている。

【討伐:オーガ/+300AP】
【現在残高:770AP】

 地雷は一度で消えた。だが穴と死体は、次の敵にも残る。

 俺とヤンが三脚の後ろへ戻った。髭の農夫が帯を支え、若い衆二人が次の箱を開く。

 引き金を半秒。離す。照準を戻して、また半秒。

 倒れた巨体を越えようとする影から撃つ。通路へ入れる数が少ないぶん、一挺でも順番に処理できた。

 三箱が空になる頃、残高は次の五箱へ届いていた。

【現在残高:2,270AP】
【7.62mm弾×500発:-1,500AP】
【現在残高:770AP】

 新しい箱が俺の三メートル内へ積まれ、三人の手を渡って三脚まで届く。

 通路の外では、オークが小柄な仲間を押し退け始めた。倒れた身体を盾にし、地雷の穴を埋め、少しずつこちらへ近づく。

 帯が尽きた瞬間、一体のオーガが死体の栓を越えた。ヤンが次の帯を載せる。数秒。

 俺は三脚を離れ、荷車の陰に置いたM4を掴んだ。すでに薬室へ一発、弾倉に二十九発。昨日の俺が、今夜の手へ渡しておいた三十発だ。

 迫る顔へ撃つ。眉間、眼窩、開いた口。軽い銃弾でも、入れる場所を選べば巨体は鈍った。

 三十発目で、オーガが荷車へもたれかかるように崩れた。

 M4のボルトが後ろで止まった。空になったことを確かめ、安全装置を掛けて木台へ戻す。その背後でM240の機関部が閉じ、ヤンが親指を立てた。

 俺は三脚へ戻り、引き金を絞った。

 備えは、二重にして初めて備えになる。

 ◇

 戦いは箱の数で区切られた。百発を撃つ。帯を替える。熱い銃身を予備と入れ替える。

 荷車の東には、一昨日の設営で引いた白い停止線がある。線より東は機関銃が削る。

 内側へ敵がこぼれた時だけ、ミアが二枚の旗を交差させ、銃口が止まってから槍と鍬が入った。誰かが前へ出ている間は撃たない。撃っている間は誰も出ない。

 石蔵の屋根では、ミアの白旗が火線を右へ、左へ動かした。

 オーガの一体が荷車へ積んだ石を掴み、頭上へ投げた。狙いをつけた投擲ではない。ただの力任せだった。

 石が屋根板を破り、白旗が消える。

 心臓が、一拍だけ止まった。

 二歩ずれた屋根の勾配から、同じ旗だけが上がった。ミアは身を伏せ、手首から先しか出していない。

 俺は旗の指す先へ銃口を戻し、石を投げた巨体を通路の栓へ変えた。

 五箱目が空になった時、視界の数字は六千を越えていた。

【現在残高:6,770AP】
【7.62mm弾:0】

 弾を増やしても、一挺の給弾蓋が二つになるわけじゃない。今足りないのは在庫ではなく、撃つ口だ。

 M240を、もう一挺。

【M240一式:-4,000AP】
【指定補給地点へ納品しました】
【7.62mm弾×600発:-1,800AP】
【現在残高:970AP】

 広場の補給地点へ、黒い銃と三脚、予備銃身が別々の箱で現れた。弾薬六箱だけは、俺の足元へ来る。

 髭の農夫が、そのうち一箱を既設のM240へ上げた。ヤンが帯を載せ、俺は先に一挺目の火線を戻す。

 引き金を半秒。離す。その間に三人が新しい銃を運び、三脚を荷車の南側へ据え、銃本体を載せていく。倒れたオーガの身体と、一挺目の銃声が、その一分を買った。

 最初の百発が尽きる頃、二挺目の固定具が噛み合った。

「ヤン」

 帯を替える数秒なら、声が届く。

「あんたの銃だ。撃て」

「……おれが、射手か」

「一人で二挺は撃てない」

 ヤンは一度だけ、火傷を覆うパッチを見た。それから新しい三脚の後ろへ伏せ、若い衆が差し出した弾帯を受け取った。

 髭の農夫が、代わりに俺の左へ入る。空の帯で覚えた手が、実弾をまっすぐ支えた。

 俺は漏斗の左、ヤンは右。銃架につけた白い限界印を、互いの側へ越えさせない。俺が黙ればヤンが撃ち、ヤンの蓋が開けば俺が撃った。二つの銃声は、重なることより、途切れないことの方が大事だった。

 ヤンの最初の短い連射が、通路の右を走るゴブリンを倒す。

【運用員還流:ヤン/+5AP】

 いつか撃てるか、と訊いた男がいる。

 今夜が、いつかだ。

 六箱あった弾が、一箱になる頃、通路の向こうに空間ができた。残った大物は、小物を殴って前へ押し、一つの塊を作ろうとしている。

 漏斗の南で、荷車が軋んだ。オーガが荷台を横へ押し、車輪止めが半分抜ける。あと半歩ずれれば、漏斗が二体幅に開く。髭の農夫が、白い停止線ぎりぎりまで戻しに出た。

 その頭上へ、太い棍棒が上がる。

 二枚の旗が、ミアの頭上で交差した。

 停止。

 二挺の引き金から、同時に指が離れる。

 ガルムが、間へ入った。

 大剣を横にして棍棒を受ける。鉄は頭を守った。だが受け切れなかった力が剣ごと左肩へめり込み、老傭兵の身体を土嚢へ叩きつけた。

 髭の農夫は車輪止めを抱えたまま荷車の陰へ転がり込み、担架班がガルムの革帯を掴んで引いた。二人の身体が射界から消えると、ミアの右の旗が上がる。

 ヤンの銃が、残ったオーガを倒した。

【現在残高:6,020AP】

 俺はガルムのそばへ滑り込んだ。革鎧の下で、左肩から胸にかけてが、嫌な形に沈んでいる。

【対象の損傷は重傷区分です】

 村長を看取った夜、灰色のまま押せなかった項目が、今は白く光っていた。

 迫撃砲と二十発を買うには、六千。手元も、六千二十。

 治療に千を使えば、届かなくなる。

 それでも、順番は決まっていた。

【重傷治療:-1,000AP】
【処置を開始します】
【現在残高:5,020AP】

 青白い膜が、砕けた肩を包む。ガルムの呼吸が一度途切れ、次は少し深く戻った。

 先に、人を生かす。

 足りない千は、まだ向こうから歩いてくる。

 最後の百発箱を二挺へ分けた。俺が左を撃ち、ヤンが右を撃つ。倒れた大物へ後続がつまずき、密集した小物が同じ火線へ重なる。

 最後のリンクが消えた時、残高はもう一度、六千二十へ戻っていた。

【現在残高:6,020AP】
【7.62mm弾:0】

 ガルムに使った千を、二人目の射手と最後の一箱が取り戻した。

 ◇

 最後の百発で、荷車へ取りついていた影は消えた。生き残りは破れ口から東へ逆流し、すぐには戻ってこない。

「ふたつめと、みっつめの、あかいくいの、あいだ! おおきいのが、にげるの、たたいてる!」

 石蔵の屋根から、ミアの声が届く。地上の俺には東壁と死体の山しか見えないが、あそこからなら壁外まで見通せる。

 二百五十メートルほど先で、生き残ったオーガが、逃げようとするゴブリンを殴って前へ並べている。弾切れを知って待っているんじゃない。崩れた群れを、もう一度こちらへ向けるための時間だ。

 二挺の機関銃へ通す弾帯は、一本もない。M4の予備弾倉は残るが、百を超える群れを押し返せる量ではなかった。

 同じ六千で、7.62mmを二千発買う手もある。だが荷車はずれ、地雷孔は死体で埋まり、ガルムも倒れた。もう一度ここまで引きつければ、今度は誰かが死ぬ。

 買い足しても、荷車線のM240からは東壁の外へ射線が通らない。壁までの最短路は、地雷孔と死体、倒れた荷車で塞がっている。二人で迂回して運べても、新しい破れ口の脇へ銃座を作る間、射手は壁外へ剥き出しになる。

 必要なのは、第二線の内側から壁を越える火だ。

 だが昨日、まだ買えなかった物の置き場所だけは作ってある。

【60mm迫撃砲一式:-5,000AP】
【指定補給地点へ納品しました】
【60mm迫撃砲弾×20発:-1,000AP】
【現在残高:20AP】

 二十。

 補給地点へ迫撃砲一式が現れ、砲弾の箱は俺の足元へ届いた。俺は二脚と大きい底板を残し、砲身と小型底板だけを指す。

「平場へ運ぶ!」

 髭の農夫が砲弾箱を抱え、若い衆が砲身と小型底板を担いだ。誰も用途を訊かない。昨日均した場所へ、必要な物を運ぶだけだ。

 俺はM4へ予備弾倉を差し、薬室へ一発送って安全装置を掛け、平場の右へ置いた。ミアの旗が交差したら、迫撃砲を捨ててこちらへ戻る。

 平場は固く締まっていた。小さな底板を噛ませ、砲身を立てる。ここからは東壁が邪魔をして、目標も着弾点も見えない。

 だが、昨日のうちに平場を基点として距離を測った。二本の短い杭を重ねて見れば、東の進入路へ向く。その横、踏み荒らされにくい畑の北縁には、百、二百、三百メートルの赤い杭がある。壁越しに見る目は、ミアだ。

 手帳を開く。赤い杭までの距離と、灰色の説明書から写した数字。

 初めて触る武器だ。だから、手帳に書いた工程を一つも飛ばさない。最初の砲弾の装薬を二百五十メートル用に揃え、握りの距離目盛りも合わせる。

 髭の農夫へ同じ形を見せる。彼が次弾を用意し、俺が撃つ前に一発ずつ確かめる。

 機関銃が黙っている今なら、平場から屋根へ声が届く。

「ミア! 二本を揃えた合図は、この砲だ! 左右は一振り十メートルの目安。手前なら低く、奥なら高く振れ! 群れの中なら円、近づいたら交差!」

 ミアは二本の旗を揃え、右、左、円、交差の順に一度ずつ返した。伝わった。

 最初の一発が撃てる形になるまで、一分半近くかかった。十秒ごとに屋根を見る。旗は交差しない。オーガはなおも逃げる小物を殴り、前列へ戻している。

 向こうには、二挺が空だとは分からない。帯替えのたびに止まり、また撃ち始めた銃を、まだ警戒している。

 安全な九十秒ではない。旗が交差すれば、砲を捨てる。その一手を残し、最後の百発で退かせた距離と死体の山が買った時間を、全部使った。

 俺は砲身を支え、最初の砲弾を筒の底へ送る。握りの引き金を絞ると、短い発射音が腹へ響いた。

 十秒ほど遅れて、壁の向こうから低い衝撃が返った。俺には土の柱も敵も見えない。

 石蔵の屋根で、二枚の白旗が揃って左へ倒れ、二度振られた。右へ二十メートルほど外れたらしい。手前・奥の合図はない。距離は合っている。

 砲身をわずかに左へ送る。二発目。

 十秒後、二本の旗が左へ一度振られた。まだ群れの右端だ。

 もう一度だけ左へ送る。三発目。

 二本の旗が頭上で円を描いた。群れの中だ。そこで初めて、オーガの塊が崩れた。

 髭の農夫が次の砲弾を俺の掌へ渡す。俺は撃ち、ミアが着弾と散った群れを見て、次の塊へ二枚の旗を振る。

 一人で撃っている弾は、一発もなかった。

 四発目。五発目。

 着弾するたび、密集の中から逃げ場が消えた。矢を弾く皮でも、足元で弾ける衝撃までは弾けない。

 壁にするため集めたゴブリンが、今度はオーガ自身の退路を塞いでいた。

 二十発目を撃ち終える。

 夜通し村へ向いていた影が、東へ割れた。

 残った魔物が、互いを押し退けて走り出す。黒森へ。来た道へ。

 足音はすぐには消えなかった。だが、少しずつ遠ざかっていく。

 誰も追わない。追える弾も、追う理由もなかった。

【現在残高:2,370AP】

 ◇

 俺は砲身から手を離し、ガルムの元へ戻った。

 治療の膜はまだ左肩を覆っている。ミアが屋根から下り、青い顔で老傭兵の右手を握っていた。

「……旦那」

「喋るな」

「治療代は、帳簿に載るんか」

「載せる。元金だけだ」

「利子を取らん商人は、早死にするぞ」

「返す奴が生きていないと、元金も戻らない」

 ガルムは喉の奥で笑い、痛みに顔をしかめた。悪態が出るなら、ひとまず大丈夫だ。

 トメ婆が、村の名を一人ずつ数え始めた。

 西へ出た伝令を除く二十九人。ヤンも、髭の農夫も、担架の女たちもいる。新しい軽傷は十人。重傷はガルム一人。

 死者は、いない。

【偉業達成:スタンピード撃退】
【+50,000AP】
【現在残高:52,370AP】

 五万という数字を、俺は初めて数えなかった。

 死者、ゼロ。

 その一行だけを、もう一度確かめた。

 誰かが笑い、別の誰かが泣いた。トメ婆は「静かにおし」と叱りながら、誰より大きく鼻をすすった。

 ミアが俺の腰へ頭から抱きつく。耳はぺたんと伏せているのに、尻尾だけが正直に揺れていた。

 俺はその頭へ手を置き、それから仕事へ戻った。

 勝った朝ほど、在庫を空のままにしてはいけない。

【7.62mm弾×3,600発:-10,800AP】
【戦場救急資材セット:-300AP】
【鎮痛・解熱薬セット:-50AP】
【手榴弾×10:-300AP】
【5.56mm弾×80発:-160AP】

 決済すると、広場の白い枠へ三十六個の百発箱が積み上がった。村人たちは順に乾いた蔵へ運んでいく。

 昨夜から残っていたパッチは、新たに傷を負った十人へ一枚ずつ使った。残りは村の救護籠へ置き、新しい救急セットは封を切らず、次の即応用に回す。

 使った分は、その日のうちに埋める。

 目録には、M2重機関銃の行も見えている。六千。今なら本体には届く。だが口径を増やせば、切らしてはならない在庫が一つ増える。今日の三千六百発と同じ買い物を、もう一列やる余力はまだない。大口径は、撃つ口と運ぶ手が育ってからだ。

 東壁に残したハンヴィーは、外板へ石の擦り跡を増やしていた。それでも石壁と土嚢の窪みが守り、警告表示は一つも出ていない。

 ヤンたちが一挺目のM240を屋根へ戻す。二挺目は三脚のまま、広場へ残した。

【戦闘解除を確認】
【予約済み車両燃料:80L/-40AP】
【現在残高:40,720AP】

 東の野には、昨夜の戦場からまだ一粒も拾っていない魔石がある。だが、その仕事へ移る前に、ミアの耳が西を向いた。

「たいちょう。うま。……いっぱい」

 双眼鏡を上げる。

 朝靄の街道を、騎馬の列がこちらへ進んでいた。先頭には、黒い鷲と剣を描いた旗が翻っている。

 魔物は東へ逃げた。

 代わりに、人間が西から列を組んで来た。


━━━━━━━━━━
【第10話 収支(AP)】
期首 520
収入 +67,200
 討伐・運用員還流 +17,200
 偉業「スタンピード撃退」 +50,000
支出 -27,000
 7.62mm弾 5,000発 -15,000
 M240 二挺目 -4,000
 60mm迫撃砲一式・砲弾20発 -6,000
 重傷治療・地雷・医療・補充・燃料 -2,000
期末 40,720
累計 87,245/システムLv3

【主な手持ち】
7.62mm弾3,600発/5.56mm弾184発/9mm弾213発/手榴弾10個
M240二挺/60mm迫撃砲一式・砲弾0/ハンヴィー満タン・稼働率100%

※二挺目の機関銃より先に必要だったのは、二人目の射手でした。

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