第7話 千の足音 転生特典は米軍払い下げ?〜弾丸1発1ポイント。ハンヴィー1台から始める異世界軍事立国、気づけばイージス艦まで揃ってました〜

《転生5日目》

 黒森が歩き始めた、とガルムが言った翌朝。

 俺は、二千八百APを使うことにした。

【現在残高:3,520AP】

 修理と最初の弾帯まで含めれば、撃てるM240一式は四千九百AP。あと千三百八十足りない。仮に本体だけ届いても、十二キロを超す機関銃を担いで森の奥へ潜るのは、偵察ではない。

【突撃銃M4A1一式:-1,500AP】
【ボディアーマー一式:-300AP】
【ヘルメット(通信付):-100AP】
【5.56mm弾×300発:-600AP】
【車両修復処理(軽微区分):-300AP】

【決済完了。現在残高:720AP】

 七百二十。

 全財産が、ゴブリン七十二体分になった。

「昨日使った、雷を吐く小さな得物で、また森へ入る気か」

 傍らで、ガルムが口の端を上げる。

「そのつもりはない。昨日、オークを見た。あれでは次は死ぬ——あんたの見立てだ。だから、偵察から生きて帰るための銃を持つ」

「銃、か。敵の面を見て、得物を替える。筋は通っとる」

 ガルムは納得したが、光の扉が開いたところで大剣へ手を掛けた。

 十秒後、黒い小銃と砂色の防具が格納庫から現れる。続いて、弾薬箱を足元へ出した。

 ガルムの視線が、荷と俺の間を二往復した。

「……一昨日の灯りといい、今の荷といい。旦那、あんたは何者じゃ」

「遠方の伝手から、荷を取り寄せられる。今言えるのは、それだけだ」

「なら、聞くのはそこまでよ。詮索は傭兵の悪徳じゃからな」

 剣から手を離した。助かる。

 M4には、三十発入りの弾倉が五本付く。ただし納品時は全部空だった。三百発の箱を開け、実包を一発ずつ弾倉へ詰める。

 敵性反応が出れば、格納庫は開かない。戦闘中でも弾薬や医療品は買える。品は三メートル以内の安全な場所へ箱のまま届くが、武器の中へ直接弾が入ることはない。

 装填済みの弾倉も売っている。値段は通常の三倍だ。

 安全装置という名の、実によくできた商売だった。

 払いたくなければ、先に買い、先に詰め、先に積んでおくしかない。補給屋の仕事は、戦う前に終わらせるものだ。

『学習を確認しました』

「誰から学んだと思ってる」

 親指の付け根が痛み始めた頃、五本が満ちた。

 ◇

 修復処理を待つ間に、照準を合わせた。

 村外れの土手を背に、百歩先へ焼け残りの板を立てる。見物人は蔵の石壁より前へ出さない。ガルムには防具に付属していた成形耳栓を渡した。

「耳へ詰めるのか。……声は聞こえるぞ」

「聞こえていい。音を全部消す道具じゃない。銃声を弱めて、耳を壊しにくくするためだ」

 俺は通信ヘルメットを被り、安全装置を外した。

 最初の一発で、世界の音が変わる。

 破裂音は遠くへ退き、ボルトが走る硬い感触と、肩へ返る反動だけが近くに残った。板の穴を見て照準を直す。撃つたびに、散っていた穴が中心へ寄っていく。

 二十発で切り上げた。一発二APの弾を、練習だけで食わせ続ける余裕はない。

「小さいのに、よく届く雷じゃな」

 ガルムが板の穴を覗き込んでいる。その後ろから、ヤンが進み出た。

「隊長。……おれにも、いつか、それが撃てるか」

 命を預ける道具だ。渡すなら、俺がヤンに命を預ける日になる。

「——いつかな」

 嘘は言わなかった。

 試射に使った二十発を箱から補い、弾倉を五本とも満たす。残り百三十発は箱のまま荷台へ積んだ。

 その頃、車両の表示が緑へ戻った。

【修復処理完了。車両稼働率:100%】

 縄梯子、双眼鏡、三人分のMRE。忘れ物を数え終え、俺とガルムとミアは東へ出た。

 ◇

 黒森へ延びる古い伐採道を、ハンヴィーで二時間。

 昨日戦った窪地では速度を落とした。夜の獣に荒らされた死体を避け、道を塞ぐオークの巨体だけ車首で脇へ押す。

「石、ひろわないの?」

「今日はもっと奥を見る。ここの三十体は、場所だけ覚えておく」

 村から遠すぎる。帰りに石を拾う余裕があれば、そのとき考える。今は、昨日より東へ進むことが先だった。

 正午前、車を隠した岩陰で三人ともMREを一食ずつ食べた。そこから先は徒歩で五キロ。風は東から西へ吹き、俺たちの匂いを森の外へ運んでいる。

 先導はミア。しんがりはガルム。俺は真ん中で、地図と時間を数えた。

 昼を過ぎ、尾根へ腹|這《ば》いで上がったときだった。

 湿った土を踏む音が、森の底から届いた。

 重い足、軽い足、何かを引きずる足。別々の音が重なり、低い一つのうねりになっている。

 千の足音。

 眼下の谷筋を、魔物の列が流れていた。

 ゴブリン。オーク。その間に、頭一つどころか三つ分も高い影が交じる。オーガ級だ。一体や二体ではない。

 先頭は、目印に決めた二本の|楢《なら》へまだ届いていなかった。

「数えられるか、旦那。儂は五十を越えたら、たくさんじゃ」

「補給屋を舐めるな。棚卸しは得意だ」

 最初の一体が楢の間を抜けた瞬間から、十秒ずつ三度数える。

 四十五。

 四十七。

 五十。

 平均して、十秒に四十七体余り。列が途切れるまで、四分十五秒。

「千二百前後」

 口にした声が、自分のものに聞こえなかった。

 ミアは袖で鼻を覆ったまま、耳を伏せている。

「とまらない。あるきながら、たべてる。うしろのも、ずっとくる」

 谷筋は蛇行している。村までの残りは、道なりで五十キロ弱。

「群れの足は、一番遅い奴に合う。日に十五キロほどじゃ」

 ガルムが、笑みの消えた顔で列を追った。

「三日後の日暮れ。あれが村へ着く」

 三日。

 千二百体。一体あたり何発。何挺で、何分撃ち続ける。頭の中の帳面へ数字を置いても、足りないという答えしか出なかった。

 それでも、数字になった。

 恐怖には輪郭がない。千二百と三日には、買い物と締切がある。

「見た。戻るぞ」

 ◇

 帰路で、北から伐採道へ落ちる細い脇谷を通過した。

 往路には、足跡のなかった場所だ。

 さらに西へ走ってから、後部座席のミアが跳ねるように振り返った。

「うしろ。いっぱい。こっち、きてる」

 車を岩陰へ入れ、道脇の高みへ上がった。

 双眼鏡の先で、百を超す群れが、いま刻んだばかりの西向きの轍を追っていた。先頭にオークが十余り。残りはゴブリンだ。

 俺たちが脇谷を通り過ぎた直後、北から伐採道へ合流したらしい。

「先遣じゃ。腹を空かせた足の速い連中が、本隊より先に飛び出した」

 ガルムが吐き捨てる。

「あの足なら、今夜には村へ着くぞ」

 三日あったはずの準備が、今日になった。

 村に残した戦力は、弓一張のヤンだけ。俺の残高は七百二十。買えないなら、手持ちと地形で止めるしかない。

「六キロ手前の涸れ谷で迎える」

 行きに見た地形を、頭の中で組み直す。

「前の百十は、そこで終わらせる」

 ◇

 涸れ谷は、中央だけが膨らみ、東西の口が細く絞られていた。

 東の入口は、倒木と曲がった岩壁に挟まれ、ハンヴィー一台がやっと抜けられる幅だった。車輪の通る轍は残っているが、両脇は根と崩れ石で埋まり、徒歩の魔物は二、三体ずつしか進めない。

 中央だけが五十メートルほど膨らみ、西の出口も、ハンヴィー一台がぎりぎり通る幅へ狭まっている。

 両岸は四メートル近い崖だ。北には岩棚。南には一か所だけ、崩れた登り筋がある。

 百十体なら、中へ収まる。

 群れが谷へ着くまで三時間半。こちらは一時間かからない。早着を見込み、支度へ使うのは一時間半と決めた。

 岩棚へ運ぶ装備を地面に並べた。M4、弾倉、手榴弾四つ。

 ガルムが、丸い鉄塊を顎で示した。

「そいつは何じゃ」

「手榴弾だ。投げた先で、四つ数える頃に破裂して、周りへ鉄片を飛ばす」

 ガルムは半歩離れた。

「なら、その手榴弾は増やせんのか」

 買い足す金はある。だが、必要なのは数ではなかった。

「東口に二つ、西口に二つ。最初の四つで、両方の口を死体で塞ぐ。その後も投げていたら、出口を銃で押さえる人間がいなくなる」

「なら、儂に持たせればよかろう」

「南を空けるな。それに、使ったことのない爆発物を、味方の近くで試させる気はない」

「なら、儂は慣れた剣で南を塞ぐ」

「あんたを欠く方が高い」

 カタログには、この地形へ向いたクレイモアもある。だが、六基の向きと導線を確かめ、初めての兵器を間違いなく据えるには半日要る。持ち時間は九十分だ。

 地面へ仕掛ける罠は、時間を読める戦場で使う。今日は頁を閉じた。

 西口のすぐ外、車の鼻先側から北岸へ上がれる所へ縄梯子を掛けた。登れば、崖上を十数歩で岩棚へ移れる。

 岩棚は谷の中央より少し西へ張り出していた。東西どちらの口も、手榴弾が届く。登った後は、縄梯子を引き上げる。

 M4はスリングで背へ回し、四つの手榴弾は防具のポーチへ入れた。これなら梯子を両手で登れる。

 南の登り筋の上端へ、白い石を置いた。石から斜面側はガルム、谷底側は俺の仕事場だ。俺は石より南へ撃たず、ガルムは谷底へ降りない。

 ミアは西口から四十メートル離れた高台の、岩の裏だ。谷底から投げた石は直接届かない。

「敵が車を越えたら、俺たちを待つな。村へ走って、ヤンに門を閉めさせろ」

「たいちょうたちは?」

「車は捨てる。俺とガルムは崖の上を西へ走って、西へ離れた二つ目の白い石で合流する」

 勝つ予定と同じだけ、負けた予定も揃える。

 ハンヴィーの停止位置は、西の狭まりに決めた。鼻先を西——村へ向け、車体の前半を谷の外へ出せば、後部で出口を塞げる。一度その形へ置いて地面に印をつけ、また西側の広がりへ戻した。

 使えれば、そのまま西へ逃げる。使えなければ、栓として置いていく。

「車で東へ出て、連中を拾ってくる。角笛みたいな音は、俺が戻る合図だ」

「儂は持ち場で待つ。名前を呼ばれたら、縁から五歩下がって伏せる」

 ガルムが大剣を抜いた。

「ミア。数と匂いだけ見ろ。英雄になるな」

「ならない。せっこう、する」

 羊毛を丸めた耳栓を渡す。ミアは灰色の耳へ押し込むと、具合を確かめるように二度動かした。

 ◇

 日が傾き始めた頃、東の道に土埃が立った。

 見積もりより三十分早い。

 西側の広がりで車を回し、谷を東へ抜けた。道の膨らみでもう一度転回し、鼻先を西へ向ける。緑の粒が顔になり、棍棒を振り上げた。

 ホーンを、一度鳴らす。

 百を超す顔が、こちらを向いた。

 逃げる獲物へ群れが弾ける。先頭が百メートルを切ったところで、アクセルを踏み込んだ。

 後輪が土を掻き、伐採道の硬い轍を拾う。東の狭まりを抜け、魔物の波より先に谷を走り切った。

 西口から車体の前半を出したところで止める。鼻先は西、後部は谷。予定どおりの栓だ。

 運転席から転がり出て、車の鼻先側に掛けた縄梯子を駆け上がる。最後の一段を越えると梯子を引き上げ、北岸を十数歩走って岩棚へ伏せた。

 下では、先頭が西口の手前へ殺到している。車の後部にぶつかり、左右の岩へ押し返された。

 まだだ。

 東を見る。最後尾が狭まりを通り、中へ入った。

「ガルム、伏せろ!」

 南の白髪頭が、谷縁から五歩下がって伏せた。

 最初の手榴弾を東口へ投げる。次を、その一呼吸後へ重ねた。岩棚の裏へ全身を沈めた直後、空気が二度、腹を打つ。

 石と金属片が岩の上を走り、東口で影が折り重なった。

「そのまま!」

 起きる。今度は西側。車から十数メートル東、先頭の後ろで押す塊へ、残る二つを続けて落とす。

 再び岩の裏へ伏せた。橙色の光が二度瞬き、ハンヴィーの後部で小さな金属音が散った。

 警告表示は出ない。

 東は死体で詰まり、西は車と倒れた先頭で塞がれた。

 前へも、後ろへも出られない。群れが、自分の重さで潰れ始める。

 M4を肩へ当てた。

 最初は、出口を越えようとする影からだ。東の死体へ登るもの。西の車へよじ登るもの。両口を銃で閉め続け、その次に中央で止まった影へ照準を移す。

 引き金を絞るたび、肩へ小さな衝撃が返り、黄銅色の薬莢が岩棚へ溜まっていく。二発ずつ。ゴブリンが倒れる。後ろの一体がそれにつまずく。

 銃口は白い石より南へ振らない。南では、登り筋から頭を出した影だけを、ガルムの大剣が谷へ戻していた。

 一つ目の弾倉が空になる。落とし、次を叩き込む。

 谷底では、逃げ場を失ったゴブリンが仲間を踏み、崖へ爪を立て、落ちた石で別の仲間を打っていた。

 オークだけは止まらない。死体を足場にして頭を出し、崖上の石を掴む。

「たいちょう、石、くる!」

 ミアの声で伏せた。拳大の石が岩棚の角で砕ける。二つ目が左の前腕を掠め、熱い線を引いた。

 浅い。腕は動く。

 昨日の講義どおり、照準を頭と膝へ戻す。

 膝を割って、下がった頭へ。外せば次。考えるより先に、指と肩が手順を繰り返した。

 二本目が空になる。三本目。四本目。

 四度目の弾倉交換で、最後の一本を叩き込んだ。頬の内側が乾き、左袖が血で張りついていた。

 それでも、次の石を持つ手はもう上がらない。

 薬室の一発と弾倉の三発——残弾四発で、谷が静かになった。

 足元には空弾倉が四本。岩棚の上を、撃った数だけの薬莢が覆っている。

【討伐完了:ゴブリン80体、オーク10体】
【討伐ポイント:+1,300AP】
【戦闘寄与判定:協力者による討伐4体・事故死16体は付与対象外です】

 ガルムが斬ったのは、オーク一体とゴブリン三体。残る十六体は、圧死と転落と同士討ちだった。

「儂の勘定は四体じゃぞ、旦那。傭兵は、自分の斬った数だけは忘れん」

「契約は飯と寝床だ。今夜の芋を大きくしておく」

「酒は」

「三日後に千二百が来る」

「渋い雇い主じゃ」

 軽口を返せるなら、まだ大丈夫だ。

 三日後にも使う左腕だ。血と土のついた傷を、腫らす余裕はない。

 左袖を捲り、最後の青い応急治療パッチを傷へ押し当てた。冷たい膜が皮膚を覆い、流れていた血が止まる。

【応急治療ユニット適用:軽傷部位。数時間で治癒します】

 ガルムが目を剥いた。

「押さえもせず、焼きもせず……数刻で塞がるのか」

「浅い傷だけだ。深手も、骨も、病も治せない」

「それでも、こっちじゃ傷は膿まずに十日で塞がれば上出来の博打じゃ」

 医療品は、これで空になった。

 谷底の魔石は拾わない。爆発した三十体の石は砕けている。残りを抜くにも、三人では半日を失う。

「本隊を止めて、生きていたら取りに来る」

「勝った者の取り分、か」

「そういうことにしておく」

 縄梯子を回収し、武器を空にした。薬室の一発と弾倉の三発を抜いて箱へ戻す。空の四本へ百二十発を詰め直した。

 満弾倉が四本、空が一本。箱に十四発。合計百三十四。

 今日の弾は、今日のうちに数える。

 ◇

 夜。村の三十人が、広場の火を囲んだ。

 俺とガルムは輪の外側に立ち、見た数字だけを話した。

 千二百。オーガ級が交じる。三日後の日暮れ。今夜来るはずだった先遣百十体は、六キロ東の谷で止めた。

 誰かが子供を抱き寄せた。乳飲み子の一人が泣き出し、すぐに母親の胸へ顔を埋める。

 報告を終えたとき、耳の奥で涼やかな音がした。

【偉業達成:『早期警戒』——氾濫の規模と到達時刻を特定し、防衛主体へ伝達しました】
【偉業ボーナス:+5,000AP】
【現在残高:7,020AP】

 世界の終わりを予告したら、報奨金が出た。

 笑えない。だが、五千APが二つの選択肢を作った。

「逃げるか、守るか。俺の伝手で用意できるのは、どちらか一つだ」

 逃げるなら、三十人が乗れる輸送用トラックが六千AP。ハンヴィーと二台に分かれれば、全員と最低限の荷を運べる。

「三日あれば峠は越えられる。ただし荷台は薄い。街道で止まれば、老人と子供を連れて城下まで徒歩十日だ。町が三十人を受け入れる保証もない」

「人間だけなら、まだ門は開くかもしれん」

 ガルムが続けた。

「じゃが、この村は半分が獣人じゃ。門前で選り分けられん保証は、ないぞ」

 ミアの耳が伏せられた。獣人の村人たちが、互いの顔を見る。

「守るなら、東に鉄の棘を張り、土を詰めた袋を壁へ積む。地面へ罠を伏せ、ハンヴィーの空いた銃座には、今の銃より大きなものを載せる」

 村人たちの視線が、ハンヴィーの空の銃座へ集まった。

「ただし、最初に用意できる弾は三百発。敵は千二百だ」

 その代わり、井戸も、麦蔵も、発電機も残る。敵は東から来る。守りを一方向へ集中できる。

「今日の谷で、本隊も止められないのか」

 髭の濃い農夫が聞いた。

「百十体だから、全部を中央の膨らみへ入れられた。千二百なら、東口の外に千体が余る。そいつらが谷の外から両岸へ回れば、今度は俺たちが、退路のない崖上へ閉じ込められる」

 農夫は黙って、火を見た。

「守れば勝てるのか」

「勝つための備えはできる」

 嘘はつかなかった。保証もできない。

「勝てば村は残る。負ければ、全滅だ」

 火の弾ける音だけが、輪の中へ落ちた。

「俺一人では決めない。ここは、あんたたちの村だ」

 最初に口を開いたのは、トメ婆だった。

「タクマ。あんたは、どっちを選びたいんだい」

 全員の目が集まる。

 補給屋としての答えなら、もう出ている。だが、ここで言えば投票ではなく命令になる。

「俺は、二つの道を並べただけだ。ただ——明日の投票、俺にも一票くれ」

「どうしてだい」

「俺も、ここで生きるか死ぬかを選ぶ一人だからだ」

 トメ婆は鼻を鳴らした。責める顔ではなかった。

 ヤンは何も言わず、ハンヴィーの屋根を見ている。最初の日から空のままの銃座を。

 東の森は静かだった。五十キロ先の足音など、聞こえるはずがない。それでも発電機の低い唸りが、昼に聞いた千の足音へ重なって聞こえた。

「夜明けに、石で決を採ろう」

 トメ婆が、村の顔を見回した。

「逃げるか、守るか。あたしらの村のことは、あたしらで決めるんだよ」


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【第7話 収支(AP)】
期首 3,520
収入 +6,300
 拓真の登録討伐90体 +1,300
 偉業「早期警戒」 +5,000
支出 −2,800
 M4A1一式 −1,500
 ボディアーマー・通信ヘルメット −400
 5.56mm弾300発 −600
 ハンヴィー修復処理 −300
期末 7,020
累計 12,245/システムLv2

【主な手持ち】
5.56mm弾134発/9mm弾213発/手榴弾0個/MRE11食/青いパッチ0枚
ハンヴィー 稼働率100%・燃料残量41%
※買い物直後の残高は720。全財産が、ゴブリン72体分でした。

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