中国が日本の企業・機関20件に両用品目の「輸出禁止」。高市首相の台湾発言が背景、でも本当に問うべきはそこじゃない

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ニュースの概要

2月24日、中国商務省が日本の企業・機関20件に対して、軍民両用(デュアルユース)品目の輸出を原則禁止すると発表した。即日適用だ。

対象には三菱造船、三菱重工航空エンジン、川崎重工の航空宇宙部門、IHIエアロスペースなどに加え、防衛大学校やJAXAまで含まれている。

さらに別の20件が「監視リスト(注視リスト)」に追加された。SUBARU、ENEOS、三菱マテリアル、TDK、日野自動車、東京科学大学などが名を連ねている(CISTEC速報)。

Reutersによれば、既存の中国のデュアルユース輸出管理対象には7種のレアアース(ジスプロシウム、イットリウム、サマリウム等)が含まれている。今回「新たにレアアースが規制対象に追加された」わけではなく、すでに管理対象のレアアースについて、リストに載った企業・機関は中国からの調達が困難になり得るという話だ。

背景にあるのは、高市首相が2025年11月7日の衆院予算委で、武力行使を伴う台湾有事であれば「存立危機事態になり得る」と答弁したことだ。

中国はこれに強く反発。渡航自粛の呼びかけ、海産物の輸入停止、今年1月のデュアルユース品目の対日輸出規制強化と、段階的にエスカレートしてきた。中国商務省は「日本の再軍備と核開発を防ぐ狙い」と主張し、第三国経由の迂回調達も禁じるとしている。

僕はこう思う

まず率直に、「やっぱりこう来たか」と思った。

高市さんの台湾有事の答弁は正しいと思っている。台湾海峡で何かあれば日本に影響が出るのは誰でも分かることで、それを首相が認めるのは当たり前の話だ。

ただ、中国がこれに怒るのも「そりゃそうだろうな」とは思う。中国にとって台湾問題は一番触れてほしくない話だ。

2月8日の衆院選で高市自民が316議席の歴史的圧勝を収めた直後、このタイミングで中国が輸出規制を仕掛けてきた。高市政権が盤石になったことへの警告の意味もあるだろう。

問題は、この「経済的威圧」に日本がどこまで耐えられるかだ。

日本のレアアースの対中輸入依存度は、NRIの推計で約60%。EVモーターの磁石に使うジスプロシウムやテルビウムといった重希土類に至っては、ほぼ100%中国頼みだという。中国が本気で止めたら日本の製造業はかなりキツい。

野村総合研究所の試算では、輸出規制が3ヶ月続けば経済損失は6,600億円程度(GDP▲0.11%)。1年間の場合は約2.6兆円(GDP▲0.43%)と試算されている。

でも、ここで冷静に考えたいのは、この中国依存がなぜ15年以上経っても解消されないのかということだ。

2010年9月、尖閣諸島沖で中国漁船の衝突事件が起きた。あの時も中国からのレアアース供給が事実上止まったと広く報じられた。あれから15年以上。依存度は当時の90%から60%程度まで下がった。

JOGMECや商社がオーストラリアのライナスに資金支援して供給確保を図ったり、インドやカザフスタンとの連携を強化したりもしている。政府や企業が何もしてこなかったわけではない。

ただ、問題の核心はレアアースの「精錬・分離」という工程にある。

レアアースは土を掘れば使えるわけじゃない。精錬の過程でウランやトリウムなどの放射性残渣や化学廃液が発生し、環境対応コストが非常に高い。

環境規制の厳しい先進国では採算が合わない。中国が環境を犠牲にしてでも安く供給し続けることで、世界中がそこに依存せざるを得ない構造ができあがっている。

重希土類の依存度がほぼ100%のまま残っているのは、そういう構造的な問題だ。

とはいえ、「仕方なかった」では済まない。15年以上あったのだから、コストを度外視してでも同盟国と精錬施設を確保するとか、もっと踏み込めたはずだ。

希望の光がないわけではない。 南鳥島沖の海底に世界需要数百年分のレアアース泥が存在することは分かっている。

JAMSTECは水深約6,000mでの採鉱システム接続試験を「世界でも初めての試み」と位置づけており(2025年12月23日発表)、今年2月の試験で実際にレアアース泥の揚泥を確認した(2月2日速報)。

ただ、商業化の目処は2028年度以降。今まさに部品調達が滞るかもしれないという目の前の危機には、すぐに効く話ではない。

もう一つ気になるのは、監視リストの方だ。

SUBARUは陸上自衛隊の多用途ヘリコプター(UH-2)を手がけてきたほか、練習機(T-5、T-7)の製造実績もある。ENEOSは防衛省向け航空タービン燃料の納入実績がある(防衛装備庁・契約実績)。三菱マテリアルは軍民両用になり得る特殊合金や電子材料を扱っている。

中国側はこれらの企業について「最終用途を検証できない」としている。デュアルユースに関わり得る企業を幅広く網にかけている形で、中国はサプライチェーンの構造をよく分かった上で急所を突いてきている。

中国は「民生品の輸出には影響しない」と言うけど、何が軍事目的で何が民生かの解釈権は中国当局が握っている。いつでも対象を拡大できる構造を作っているわけで、素直に信じるのは難しい。

僕みたいな普通の会社員からすると、レアアースの精錬工程がどうこうと言われてもピンとこない。

でもスマホの振動モーター、エアコンのコンプレッサー、EVの駆動モーター、MRI装置の造影剤(ガドリニウム)。こういう日常や医療にあるものにレアアースは使われている。

そして今、イラン攻撃による原油高騰と中東情勢の不安が重なっている。原油は中東に9割以上(経産省・2026年1月速報値で95.1%)、レアアースは中国に6割。どっちかで何かあるだけで国が揺れる。

その構造自体が、僕が一番不安に感じていることだ。

まとめ

高市さんの台湾有事発言は間違っていないと思う。ただ、「言うべきことを言った」で終わりにしないでほしい。

外交で強く出るなら、それを支える経済的な備えがないと意味がない。精錬施設を同盟国と確保する、南鳥島の開発を急ぐ、サプライチェーンを分散させる。そういう地味で金のかかる作業を、本気でやるかどうかだ。

15年以上前にも同じことをされて、痛い目を見たはずだ。それでもまだ首根っこを掴まれている。この国は、備えが足りないまま強い言葉だけ先に出してしまっている。

そのツケが僕らの生活に跳ね返ってこないことを、祈るしかない。

【参考】

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