
ニュースの概要
2026年4月から、防衛力強化の財源として増税が始まる。対象は法人税・たばこ税・所得税の3つだ。
まず4月に先行するのが法人税とたばこ税。
法人税については「防衛特別法人税」が新設される。法人税率そのものが上がるわけではなく、各法人の基準法人税額から年500万円を控除した残りに4%を課す付加税だ。法人税を課される法人が対象で、計算上ゼロになる法人も申告は必要になる。
たばこ税は、加熱式たばこの課税方式を見直し、紙巻きとの税負担差をなくすもの。4月と10月の2段階で引き上げられる。
フィリップ・モリスは4月1日から「テリア」を1箱40円値上げして620円に、「ミックス」を50円上げて560円にすると発表している。さらに2027年から2029年にかけて、たばこ全体が段階的に3年で計1箱30円程度増税される予定だ。
そして2027年1月からは所得税にも「防衛特別所得税」が新設される。所得税額の1%を上乗せする一方、復興特別所得税を2.1%から1.1%に引き下げることで、当面の税率は変わらないとされている。
ただし、復興特別所得税の課税期間が2037年から2047年に10年延長される。支払いが続く期間が長くなるのは事実だ。
3つの税を合わせて、2027年度に年1兆円強を確保する計画(政府見込み)。
僕はこう思う
防衛費を増やすこと自体は、正直必要だと思う。中国のレアアース規制の件もあったし、安全保障環境がきつくなっているのは肌感として分かる。
ただ、ここで整理しておきたいのは、今回の増税には3つのレイヤーがある ということだ。
まず2022年末、岸田政権が「法人・所得・たばこの3税で防衛費の財源を賄う」という大枠のレールを敷いた。
次に2024年末、石破政権下の税制改正大綱で、法人税とたばこ税の「2026年4月開始」が正式に決まった。
そして高市政権が2025年末に決断したのが、2年連続で先送りされていた所得税増税の開始時期を2027年1月に確定させたことだ。
つまり4月の法人税・たばこ税は前政権までの既定路線だ。高市さんがひっくり返すこともできたはずだが、そのまま走らせている。
「新たな家計の負担増とはならない」と説明しているけど、復興特別所得税の課税期間を10年延ばしている以上、負担が続く期間が長くなるのは間違いない。
高市さんは2022年、岸田政権が防衛増税を表明した時に「増税のタイミングや進め方がおかしい」と反対していた。あの時の姿勢は筋が通っていたと思う。それが今回、自分が首相になって、所得税増税の引き金まで引いた。
なぜ変わったのか。正直、僕にはよく分からない。
ただ、背景として言われているのは、積極財政路線による長期金利の上昇や円安進行に対する金融市場からの圧力。そしてトランプ政権からの防衛費増額要求だ。理想と現実の間で判断を迫られた、ということなのかもしれない。
それは分かる。分かるけど、だったらその事情を正面から国民に説明してほしい。「負担は増えません」じゃなくて、「こういう理由で必要です」と言ってくれた方が、まだ納得できる。
もう一つ。「歳出削減でなんとかしろ」と言いたくなるけど、政府の説明によると、防衛費増額分(毎年度約4兆円規模)のうち約4分の3は歳出改革や決算剰余金などで賄い、残りの1兆円強を増税で賄う方針だという。
問題は、その「歳出改革」が本当に痛みを伴うものなのかということだ。既得権益にちゃんと切り込んだのか、それともバラマキを残したまま足りない分を国民に回しただけなのか。そこが見えない。
まとめ
防衛力の強化は必要だと思う。ただ、そのための財源の取り方と、国民への説明の仕方に納得できない部分がある。
高市さんの保守としての姿勢は評価してきた。だからこそ、「増税に異を唱えていた人が、増税を決める側に回った」という事実は、ちゃんと見ておきたいと思う。
【参考リンク】
- 日本経済新聞「防衛1兆円増税4月開始、加熱式たばこ20〜50円上げ 法人税4%上乗せ」(2026年3月4日) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA253RL0V20C26A2000000/
- 国税庁「防衛特別法人税が創設されました」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0025004-109_1.pdf
- 財務省「令和7年度税制改正の大綱(たばこ税関連)」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/07taikou_06.htm
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要(所得税関連)」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_gaiyou.htm
- 時事通信「防衛増税、27年1月から 所得税に上乗せ、復興税下げ相殺」(2025年12月19日) https://www.jiji.com/jc/article?k=2025121900976&g=eco
- NRI 木内登英「高市政権下で予想外の防衛増税の動き」(2025年12月8日) https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20251208.html
- Impress Watch「フィリップ・モリス、アイコス用50銘柄を値上げ」 https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2086572.html
- フィリップ・モリス・ジャパン プレスリリース「たばこ税の課税方式見直しに伴う小売定価改定認可」(2026年2月17日) https://www.pmi.com/content/dam/pmicom/markets/japan/docs/20260217-pmj-pressrelease-price-increase-approval.pdf
- 財務省「令和5年度税制改正の大綱の概要」(2022年末・岸田政権の防衛財源枠組み) https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2023/05taikou_gaiyou.htm
- 防衛省「防衛白書 2025:防衛力整備の財源」 https://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2025/html/n230206000.html

